臨床獣医となって13年となりますが、今年は珍しい年でした。
今まで経験の無かった泌乳期中の子宮捻転。
1例目は乾乳直前の牛。食欲不振と疝痛症状の稟告で往診。腹部に力が入っているようで右ケン部からはガスと拍水音が聞こえる。
一見すると消化器疾患ですが、直腸検査を実施すると子宮頸管から引っ張られるように捻れている。
当然子宮頸管も開いていないので、そのまま手術。右ケン部のみ切開し、腹腔内でなんとか整復した。ちなみに第四胃右方変位も合併していました。その後、予定日に無事出産することができた。
2例目も乾乳直前の牛。稟告はこちらも疝痛症状。
産道は開いているようだが、手が入らないほどの重度の捻れている。1例目の経験があったため、今回もケン部切開で手術。
ところが、整復までもう一息からまるで動かない。仕方なく整復不能のまま帝王切開へ…
案の定、子宮を創外まで牽引することが困難な状況で実施。後日廃用となってしまった。
そしてつい先日3例目。今回も乾乳直前の牛。疝痛症状はなくすでに悪露の排泄が見られる。
180度くらいの子宮捻転であったが、胎子はすでに腐敗し膨満している。
捻転の整復は容易出会ったが、娩出に非常に苦労した。幸い母牛は現在も良好。
2例目の症例では、母牛回転法などを試みた方が良かったかもしれない。1例目がケン部切開で良好であったため、この症例も何とかなるものだと油断してしまった。
講習会でも紹介されていたが、帝王切開時に子宮捻転が整復できなかった場合の予後は非常に悪いようだ。
もちろん助かった症例もいるが、腹腔内や子宮が癒着する可能性が高い。
重度の捻転の症例においては、後肢吊り上げ法と、母牛回転法を併用し捻転を軽減した後に、ケン部切開による用手整復を行ってみても良いのかもしれません。
失敗から学ぶことは多いです。
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