去年は「バターが足りない」、そして今年は「牛乳が余って捨てられる」と、毎年酪農生産の需要と供給に関連した、このようなニュースが話題となっています。このような需要と供給の変動の理由として、これらの製品の原料となる「牛乳」がそもそも生物由来のものであることが挙げられます。しかしながら理由はそれだけではありません。今回はその理由を説明しつつ、「牛乳が余って捨てられる」という今年の問題について、私たちにできることを考えてみたいと思います。
「牛乳」はどのように振り分けられるのか
「牛乳」は酪農家から集荷された後、飲用、乳製品、バターなどに製造が振り分けられます。基本的には消費期限の短い飲用向けが最も多く、続いて乳製品、そして最後に長期保存ができる、バターと脱脂粉乳の順となります。下の図のように、「牛乳」の生産量が増減した場合には、バターなどの生産を調節することによって、無駄なく利用しています。
「牛乳」の生産量と消費量のバランス
「牛乳」の生産量は季節による影響を受けます。暑さに弱い乳牛は、夏場、全国的に見ると、食欲の低下により牛乳の生産量が落ちます。一方、冬〜春にかけては、牛乳の生産量は増加します(北海道は夏増加、冬減少)。
「牛乳」の消費量は人々の暮らしの影響を受けます。夏場は飲用やアイスクリームなどにより、消費量は大きく増加しますが、逆に冬場の消費は減少します。また、2020年のコロナウイルスを例とした、学校給食などの需要も消費量に影響します。
バターの生産量のバランス
「牛乳」が分離・加工される過程において、バターと脱脂粉乳(昔は飲用として、現在は主にお菓子などに利用)が製造されます。つまり、先ほど説明したように、余剰の「牛乳」が増えると、バターだけでなく、脱脂粉乳の生産量も増加し、「牛乳」が不足すると、バターも脱脂粉乳も不足することになります。また、バターは、製造するための費用の負担が大きいため、脱脂粉乳とのバランスをとりながら作り過ぎないように製造調整されています。また、製造するための工場や施設も限られているために、急な需要の増加などに製造が追いつかないのです。
余った「牛乳」5,000トンをバターなどの加工に回せないのか?
「牛乳」の生産量に応じて、乳製品やバターなどで調整するはずですが、この冬「牛乳」5,000トンが廃棄されるのではという事態となりました。原因としては
- 今年は夏の影響が少なく、都府県の生産量が例年をどこも上回った
- 「牛乳」の生産を止めることもできない
- 全国の工場や施設もフル稼働でも、加工に処理しきれない
注意しなければならないのは、この5,000トンは流通する前の廃棄量です。毎年、製品としてお店で売れ残ったり、家庭で廃棄された量も5,000トン弱にもなる。つまり、実質10,000トン余りが、本当の意味で私たちが解決しなければならない量なのです。
では、私たちができる解決策は?
この冬の廃棄量5,000トン = 5,000,000ℓ
500万人 ならば 1人 普段より1ℓ多く飲む
1000万人 ならば 1人 500ml
2000万人 ならば 1人 250ml = 小さいパック1箱分
+ 年間の廃棄量
1人で解決するのは不可能ですが、複数の人が集まれば大きな助けとなります。まずは1パックの牛乳でも飲む事、そして、普段から食品ロスに着目して食べ物全てを大切に頂く事が、最も最善の解決策となると私は考えます。
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