現代のわたし達は、AI技術を便利なツールとして利用しています。そんな中、凄まじいスピードで進化しているAI技術を目の当たりにすると、「将来便利な世の中になる」と楽しみに感じる一方で、「人工知能が人間の知能を越えるのか」、「AIのせいでわたし達の仕事が減るのか」など、AIに対して不安に思う人もいると思います。
この本を読むことで、10〜20年後に、現在の仕事がどのように変化していくのか、そして、どのような知識やスキルを磨いていくことが良いのかを考えるきっかけとなりました。
わたしの結論から言いますと、
「牛の獣医師の仕事は、AIに良い意味で仕事を奪われるが、ともに共存できる」です。
今回は本の内容を参考に、このように考えた理由を書きたいと思います。
AI(Artificial intelligence)のイメージ

「AI」と言うと、わたし達の場合、
世間一般とは異なる「人工授精:Artificial Insemination」を先にイメージしてしまいますね。
ここでのAIは、「人工知能:Artificial Intelligence」の方です。
「人工知能」に対してどんなイメージを持っていますか?
計算やデータ分析などに非常に優れている。と思う一方で、「あれっ」と思うようなデタラメな英語翻訳など、「賢い」と「お馬鹿」の両方を合わせ持っているイメージではないでしょうか。
実際のところはどうでしょうか。
数学や暗記科目は得意

AIは、大量のデータや情報を処理・計算することにより、意思決定を行います。
そのため計算や統計、画像認識、暗記(パターン化)などの分野においては得意です。(東大入試を受験したAIの成績では、数学の偏差値は70以上の成績だったそうです。)
酪農の現場では、「自動搾乳ロボット」が良い例でしょうか。膨大な牛の乳房・乳頭配置などのデータを集めて学習したことにより、今では様々な特徴の牛を、人よりも上手に搾乳できるようになったのではないでしょうか。
他にも、「モーションセンサー」によるモニタリングやデータ収集などが酪農の現場では、広く普及しているのではないでしょうか。
国語や英語は苦手

一方で、国語や英語など、読解力(意味を理解すること)を必要とすることは苦手です。
例えば、「島根と広島に行く」という文章があるとします。
この場合、「島根県と広島県に行く」と「島根さんと広島県に行く」と解釈できます。
人の場合、文脈からどちらの解釈が正しいのか判断することができます。
ところが、AIの場合、文脈から答えを導くことができないのです。(参考図書から引用)
(その結果、センター試験における国語と英語の偏差値は、50までしか伸びなかったそうです。)
最近では、論文などの翻訳がだいぶ改善されているように思われますが、それでも内容が正確な訳は半分くらいでしょうか。
人の医療現場においては、医療ドラマで見かけるように、AIによる「画像診断技術」がすでに導入されています。しかし、病気の診断となると、まだまだ難しいようです。
例えば、血液の数値を解釈する時、個体差や色々な背景を考えますよね。実際、同じ値でも全く異なる病態であったりもします。これはまさに読解力が求められるの同じことで、現在のAI技術ではまだ不可能だそうです。
奪われる仕事、残る仕事
社会全体の中で、AIに奪われる仕事はAIの得意分野である計算や統計、画像認識などに関連のある、「事務業務」,「販売窓口」,「単工作業員」を例に、定型業務のような仕事が挙げられています。
一方、残る仕事とは
AIの苦手とする意味を理解する仕事やコミュニケーションを必要とする仕事、「デザイナー」,「コンサルタント」,「医師」そして「獣医師」も含まれていました。
共存していくために必要なこと
AIの特徴として、事務処理や画像認識が得意であると書きました。
このことは、獣医師にとってのAIは「敵」ではなく「強い味方」と言えるのではないでしょうか。
と言うのも、牛の獣医師は全国でも希少です。
診療業務のあとは、あまり好きではない事務作業に毎日追われています。そして、この事務作業を代わりにやってもらえるのであれば、「ぜひ奪って下さい」といったところですね。
ではAIの苦手な作業に出くわす場面とは。例の一つとしてMPT(代謝プロファイルテスト)はどうでしょうか?
MPTも牛群の値の傾向から、健康状態を予測します。しかし、血液検査だけでは、なぜこの健康状態になったのかという原因は分かりません。血液検査の結果と、現場の状況を合わせて、原因を見つける必要があります。この「読み解く力」こそ、AI側から獣医師へ求められていることではないでしょうか。
終わりに

わたしが獣医師になった頃にはすでに「自動搾乳ロボット」「自動哺乳機」「発情発見機」など他にもたくさんのAI技術を用いた機器が登場していました。
そして以前の技術から凄まじいスピードで進化をしていると感じます。FSの未来が本当かどうかも含めて、AI技術で「できること」「できないこと」を正しく理解してその時代に適応したスキルを、正しく身につけていく事が生き残る手段ではないかと思います。
コメント