牛の炭疽病のワクチンを接種するべきか?

わたしの地域では4月〜6月にかけて、「炭疽病」「異常産」ワクチンを慣例として接種しています。

しかし、最近では「炭疽病」のワクチンについては、関係者の中でもワクチン接種の必要性に関して、意見が分かれています。

みなさんの地域ではどうですか?

わたしの考えとしては接種すべきと考えています。理由としては、経済的な損失や、食品に対する安全性に関する信用性を失う可能性があるためです。では、少し詳しく説明したいと思います。

目次

「炭疽病」とは

炭疽病」とは、Bacillus anthracis という土壌中に細菌により引き起こされる病気です。家畜においては「法定伝染病」に指定されています。また、「人獣共通感染症」としてヒトにも感染し様々な症状を引き起こします。ヒトでは、比較的抵抗力を持っているため、発生はまれです。また「皮膚炭疽」「腸炭疽」「肺炭疽」に分類されていますが、ほとんどは「皮膚炭疽」とされ、傷口から感染し黒っぽいかさぶたを形成します

一方、牛などの草食動物は感受性が高く急性敗血症などを引き起こします。死亡した動物では、皮下の浮腫や鼻孔や肛門などの「天然孔からの出血」が見られます。また、「血液が凝固しない」などの特徴も見られます。

発生状況

国内におけるヒトの「炭疽病」は、平成6年1994年)の「皮膚炭疽」の発生が最後の報告とされています。一方、牛の炭疽病の発生は、平成12年(2000年)の宮崎県での報告が最後となっています。次のグラフは、牛の炭疽病の発生報告の推移となります。

農水省ホームページより

数十年前では、非常に多くの発生が国内においても見られました。現在ではワクチンの普及や、飼養管理の改善によりほとんど発生は報告されていません。

しかし海外における発生状況では、平成28年(2016年)にロシアの町で集団発生した報告があります。70年前に感染したトナカイの死骸から感染が拡がったとされている。温暖化の影響により、永久凍土が溶けたことで、菌が流出したようだ。

日本でも同じことが起こるか?

先ほどの発生状況の推移からも分かるように、日本においてはここ数十年発生はありません。ということは、最後に発生した地域以外は安心でしょうか?

わたしは安心できないと思っています。

理由は2つあります、

1つ目はロシアの事例でもあるように、環境条件によっては病原体が、予想以上に長く生存している可能性があるのではないかという点です。

2つ目は、わたしたちが気が付かない(報告していない)可能性があるという点です。死亡確認の際に、天然孔からの出血の有無は義務のように確認していますが、野生動物はどうでしょうか?

以上の2つの点を踏まえると可能性はゼロではないと思ってしまいます。

牛で発生するとどうなるのか?

「炭疽菌」は感染した牛の病巣だけでなく、血液、糞尿、乳汁、その他あらゆる部位より排出されます。そのため、牛乳、肉の出荷は当然できなくなります。さらに「炭疽菌」の特徴から農場に常在化してしまうと、牛乳の廃棄による経済的な損失は非常に大きなものになります。

また、発症が疑われた場合の措置や、確定した後の蔓延防止の措置など非常に多くの対応が獣医師に求められます。ヨーネ病やサルモネラ症で苦労した経験のある方も多いのではないでしょうか…

対応措置については「家畜防疫対策要綱」が制定されています。参考にどうぞ

https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/attach/pdf/index-304.pdf

対策にかかるコストは

KMバイオロジクスが製造販売しているワクチンを使用しています。1本で50頭分接種でき、費用のほとんどは注射の技術料のみです。1頭あたり350円前後で年に1回接種しています。他のワクチンと比較しても非常に安価ですね。

以上の理由から、やはり「炭疽病」のワクチンは接種するべきだと考えています。最後にわたしを含めて、ほとんどの方が「炭疽病」に罹患した牛を、実際に経験したことが無いと思いますので、動画を紹介します。

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