コンテナと餌

飼料価格の高騰による経営の危機」と何度も取り上げられているように、

去年の今頃は、

牧場を続けるのか…

それとも離農するのか…

どちらの選択も先が見えない状況だったかと思います。(もちろん今でもそうですが…)

飼料価格は数十年前と比較して、数円単位では年々上昇し続けてはいます。

ところが去年の上げ幅は、品目によっては30円以上の値上げとなり、例をみないほどの急騰でした。

飼料価格の高騰の要因は主に3つ挙げられます。

  • 円安
  • 原材料の高騰
  • 輸送運賃の上昇

1,2については物資を輸入するにあたって一般的な要因として、畜産業界以外にも大きな影響を与えました。3については、特に畜産業界において、より大きな影響を受けた要因となります。

今回は「輸送運賃の上昇」についてまとめました。参考図書は「コンテナから読む世界経済」です。

目次

リポジショニングコスト

 現在、日本において輸出入されてくる物資の約40%(金額ベース)はコンテナ輸送が用いられています。精密機器と異なり重量や体積が大きく、中でも単価の安い牧草や穀類は、日本にコンテナ輸送されてくる品目の中でも上位に位置します。

牧草の仕入れ先は、アメリカオーストラリアカナダがそれぞれ6割、2割、1割を占めています。輸送されてくる積荷は日本とそれぞれを結ぶ直通便もありますが、ほとんどは、日本、韓国、中国を経由しループするようにアメリカなどへ戻っていきます。その際には、コンテナ内の積荷を下して、輸出品をそのコンテナに再び積み込んで輸入元まで戻す仕組みとなっています。

常にコンテナの中に積荷が入っていることで、効率よく輸送することができるのですが、空のままのコンテナを返却する事が起こります。これを「インバランス」と言います。簡単に言ってしまうと、輸入が輸出より多いとこのインバランスも多きくなります。そして、この空のコンテナを戻すためのコスト(リポジショニングコスト)も輸入するための運賃に含まれているため、運賃が割高となってしまうのです。

かつて「高度経済成長期」に輸出強国であった日本は、現在では輸入超過となり(コロナの影響も大きい)、このインバランスも当然大きくなっているため、リポジショニングコストが問題となっています。

コンテナの不足

 トレーラーに積まれた大きなコンテナを一般道でよく目にします。コンテナの大きさや種類は様々ですが、船で港に運ばれたものが、そのままトレーラーに乗せられてセンターへ集められます。コロナ禍では、このコンテナが不足してしまい輸入できない事態が起こりました

コンテナが不足した要因として2つ挙げられます。1つ目の要因として、中国におけるコンテナ製造の減少が挙げられます。コンテナの約97%は中国で作られています。近年では中国の経済発展はすさまじく、コンテナによる輸出入は世界1位となっています。ところが、トランプ政権からのアメリカとの貿易摩擦の影響により、貿易の規模が縮小し、それに伴いコンテナの製造自体も減少してしまいました。現在では、他国でもコンテナの製造を始めたようですが、立地条件(製鉄所、鉄の原料、湾岸沿い、インフラの整備)が厳しく、なかなか伸び悩んでいるようです。

2つ目の要因としては、コロナウイルス流行の影響が挙げられます。特に中国など、ロックダウンによる港も含めた経済活動の停滞。また病気の蔓延による人員不足などにより、港での積荷の受け渡しに遅れが出たことで、コンテナの流れが停滞してしまいました。

また、船の運航速度が、環境に配慮してゆっくり(燃費が向上)となっていることも、コンテナの到着も返却も遅れる要因として挙げられます。

コンテナが不足することで、供給と需要のバランスが崩れ(需要過多)、結果として物資の価格が上昇します。(当時は一部では牧草がそもそも手に入らないという窮地もありました)

畜産業界と運賃の関係

 コンテナ輸送の運賃の上昇は、特に畜産業界により大きな影響を与えました。

運賃は基本的にコンテナ1つ当たり〇ドルと決められています。単価の高い物資ほど、販売価格に占める運賃の割合は小さくなります。反対に牧草や穀物など、単価の安い物資ほど、販売価格に占める運賃の割合は大きくなります。つまり、牧草などは運賃の上昇の影響をより大きく受けることとなります。

以上の主な要因が、畜産業界が価格上昇に寄与したと考えられています。

今後は

 今後、日本はGDPも含めて、世界における立ち位置はジリジリと後退していくと見込まれています。しかし、再び輸出に乗り出すことは、円安、インバランスの両方に立ち向かっていける可能性があるのではないでしょうか?

再び世界から注目される日本へ

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