飼料イネについて勉強してみる

 2022年10月現在、あらゆるモノの価格が上がり、畜産に関連した飼料価格の高騰はどこまで行くのだろう…といったところです。

こういった影響も受け、わたしの住んでいる九州地区は、全国の牛乳の生産量を比べても特に減少しています。

 購入粗飼料の利用割合が高い福岡県では、今年は今まで以上に「自給飼料の利用割合を向上させよう」という動きがあります。福岡では牧草の生育にあった土地よりも水田の方が比較的多いため、飼料イネサイレージ(WCS)の収穫が急増しています。

今回は、飼料イネに関する基本的な事と、先日起きた事例を紹介します。

目次

飼料イネの特長

飼料イネは、「イネ発酵粗飼料(以下イネWCS)」と「飼料用米」して家畜に与えるために改良された品種であり、わたし達が食べている通常の米とは異なります。「飼料用米」は人の場合と同様に、籾を収穫して「」から栄養を摂ることを目的としたものです。一方、「イネWCS」とは、消化性の悪い籾の影響を低減するために、子実が完熟する前に籾と茎葉を丸ごと収穫し、乳酸発酵させた飼料です。牛の場合は、籾ではなく茎葉を食べるために収穫されています。「」、「茎葉」のどちらかを目的とするのかで次の様に品種は分類されています。

  • 茎葉多収型
  • 中間型
  • 飼料用米型(穂型

福岡県で収穫されている飼料イネ

茎葉多収型飼料イネ(たちすずか)
食用米

たちすずか」という品種の飼料イネと一般的な食用米を比較しています。飼料イネと食用米とでは見た目から異なります。茎葉の長さは、食用米の2倍ほどあります(120cmくらい)。ところが、穂の部分の粒数は食用米の3分の1程度しかありません(そのため穂が垂れず、ピンと立っています)。

また、収穫時期においても食用米と異なります。イネは成長するにつれて、穂に栄養が集まり、その結果、子実は硬くなります。飼料イネの場合、子実に栄養がいく前の黄熟期に収穫するので、指でプチュっと子実は潰れてしまいます。その分、茎葉部に栄養が残るため、牧草の代わりとして与えることができるのです。

一般社団法人 日本草地畜産種子協会ホームページより

飼料イネの中でも品種によって穂と茎葉部の割合が大きく異なります。左側がイネWCS型、右側が飼料用米・イネWCS兼用型となります。

茎葉多収飼料イネのデメリット

飼料イネの特徴として、適正時期に収穫することで、栄養を獲得できる一方で、収穫時期が遅れてしまうと消化率は大きく下がってしまいます。また、籾の史実へ栄養を取られてしまうため、茎葉部の栄養は失われてしまいます。さらに籾の消化性はあまり良くないため、WCSとしての栄養が少ないばかりか、消化不良による食滞などを引き起こす原因にもなってしまいます。

茎葉多収型のメリットである「籾が少ない」という点が、一方で播種するための種の確保が課題となるデメリットにもなっています。こういった課題を改善するために「自家増殖(自家採種)」という方法が実施されています。

自家増殖(自家採種)とは

 自家増殖とは、種子の確保のため認定許可をもらい、自分で育てた飼料イネから来年播種するための種を採種することです。このようにして、穂が少ない品種の栽培をカバーしています。保管方法など様々な注意点がありますが、ここでは割愛させていただきます。

自家増殖の問題事例

2022年9月の出来事。

往診移動中、食用米や飼料イネが広がる風景。

地域では「たちすずか」という品種を作付しているため、先ほどの写真の様に見た目だけで見分けがつくのですが…

これはどっちだ?別の品種?

丈の長さは半分強(普通の食用米と同じくらい)。穂の量は食用米と比べると少ないが、穂が垂れるほど付いている。生産者の方に聞いてみると、品種はやはり飼料イネ「たちすずか」だった。

生育不良?でも穂が多くついているし…どういうことだろう。

自家増殖しすぎると先祖の形質に戻ってしまうらしいです。詳しく調べてみると、そもそも品種改良により現在の茎葉多収型の飼料イネは作られたのですが(牛ではF1,F2,…)、父方の先祖にはコシヒカアキタコマチなどの食用米が入っている様です。遺伝子の掛け合わせで表現型となりますので、先祖まで一気に戻ることはなくとも、劣性遺伝子の発現などにより食用米に形質が戻るのでしょう。

通常は3年ほど自家増殖した翌年は、新たな種を購入して再び収穫・自家増殖を行なったりするそうです。(ここの畑は10年近く自家増殖していたそうです)今年は収量が少なく、大きな損失となってしまった様です。

まとめ

飼料イネ」とひとくくりとされてしまいますが、品種によってはWCS、飼料米と用途が異なります。また、刈り取り時期によっても大きく成分が異なってしまうことから、給与量なども注意深く考える必要があります。

今回は「飼料イネ」について取り上げましたが、「豆腐粕」、「醤油粕」、「酒粕」など他業種の産業廃棄物についても、飼料としての利用が増えています。

疾病の予防と経営の安定のためにも、これらの飼料の知識を習得していく必要がある様ですね。

参考資料

  • 茎葉多収で消化性に優れ高糖分含量の飼料用水稲品種「たちすずか」の育成 松下ら(2012)
  • 一般社団法人 日本草地畜産種子協会ホームページ
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