子宮内膜炎の診断で活用するサイトブラシのメリットとデメリット

目次

はじめに

普段の診療業務のにおいて、繁殖の治療としてどんな疾病がありますか?

その中でどのような疾病が多く占めていますか?

わたしの管内においては割合が多い順から、

黄体遺残・鈍性発情、卵胞嚢腫、卵巣静止そして子宮内膜炎となっています。

獣医雑誌のアンケート調査においても、ほとんどこれと同じ結果だったそうです。

PGやGnRH製剤の使用が多い分「子宮内膜炎」が相対的には少なくはなりますが、

実際に見逃されている可能性があることも指摘されています。

子宮洗浄時の還流液

写真は先日リピートブリーダーの子宮洗浄時に採取した還流液です。

膣検査などでは粘液の汚れなどは肉眼で確認できませんでしたが、実際は汚れていました。

これが見逃されていたということですね…(「気づくの無理だよ」と心の中では正直思いましたが…)

子宮内膜炎の分類と診断方法

子宮内膜炎は「臨床性子宮内膜炎」と「潜在性子宮内膜炎」に分類することができます。

  • 臨床性子宮内膜炎
    • 外子宮口から膿性滲出物の排泄をともなう
  • 潜在性子宮内膜炎
    • 膿性滲出物は認めないが、子宮内に炎症を認める

診断方法としては次のように実施されています。

  • 「臨床性子宮内膜炎」
    1. 直腸検査
    2. 超音波検査
    3. 膣検査
    4. メトリチェック
    5. サイトブラシ    など実施頻度順に1〜5
  • 「潜在性子宮内膜炎」
    1. サイトブラシ
    2. 超音波検査(困難)

上記のように、「潜在性子宮内膜炎」の発見は視覚的には困難とされています。

そのため、診断方法としてサイトブラシによる細胞診が有効であるとされています。

また、超音波検査においても、やはり見逃されてしまう症例が数多くあると報告されています。

サイトブラシ(細胞診)による診断法

メトリブラシセット(富士平工業より引用)

採取された子宮内膜スメアにおいて、観察された多形核白血球の割合(PNM%)を求める。

基準値として様々な報告があるものの、分娩後5週でPMN%が6%以上もしくは、8週以降で4%以上を子宮内膜炎と診断する。(Ghanem et al 2015)

サイトブラシ(細胞診)の手順

サイトブラシ(全体像)
サイトブラシ先端(挿入中の状態)
サイトブラシ先端(スメア採取時)

サイトブラシの全体像としては、精液注入器に似ています。外筒の中にブラシをセットした状態です。(1枚目)

サイトブラシの先端を隠した状態で、AIを行うように子宮内に挿入。(2枚目)

挿入後に先端に隠したブラシを押し出し(3枚目)ゆっくりと回して採取します。擦ったりすると出血することがあります。

染色(ディフクイック)

採取した後は、素早くスライドガラスへ塗布し、乾燥させます。(わたしは車のエアコンを利用しています)

現場で塗抹(ディフクイック)・鏡顕までできればその場で確定診断することができます。(診療所へ戻ってからでも実施可能です)

細胞中に占める多形核白血球の割合をカウントし、評価します。

メリット・デメリット

先日の事例としてご紹介したように、「潜在性子宮内膜炎」を発見できる点としては大きなメリットに感じます。

理由として、リピートブリーダーの治療として、子宮洗浄をした際、ほとんどの症例で「潜在性子宮内膜炎」を認めたことです。

デメリットとしては、やはり手間や設備の問題でしょうか。

現場での採取(これはAIよりは簡易)や、標本作成、PMN(%)測定は普段の作業の負担になります。

また、使用前の滅菌機材などの環境も整える必要もあり、これも大きな導入障壁にもなりそうです。

ブラシ1本800円弱。滅菌済みで、なおかつディスポーザブルもっと安価であれば…

まとめ

サイトブラシを用いた「潜在性子宮内膜炎」の診断は非常に有効だと思います。

しかし、①効率良く実施する必要があること、②追加コスト(滅菌機材など)をどう抑えるか、が課題と考えられます。

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