ぜひ学んでおきたい、ビタミンA不足が招く大きな損失

たくさんの個体疾病や群疾病がある中で、

今回はビタミンA不足」が原因で農場に大きな損失を与えた事例を紹介します。

ビタミンA不足」というと肥育の和牛のことと思うかもしれません。

しかし今回の事例はホルスタインの搾乳牛です。

まれな事例ですが、頭の片隅にでもいいのでぜひとも学んでおきたい知識です。

では先日発生した事例を紹介します。

目次

死産、早産が続く

2022年3月

「せっかく和牛が産まれる予定だったのにまた死産だったよ」という連絡。

この農場は搾乳牛20頭弱の小規模農場。

「また!」

「ついこの前は1月早い死産だったよ。」

「その前は生きてるけど早産だし、不幸が続くなあ。」

さすがにこの規模で和牛が3頭続けて異常が起こると不自然だ。

さらに生きている和牛も目が見えていないようだ両目ともやや白濁している

さらに、去年の9月に産まれた和牛も目に異常があったとのこと。

原因を考える

この地域では、「異常産混合ワクチン」は毎年接種しています。

子牛も出生初日は介助がないと立てませんでしたが、骨格には異常は認められませんでした。

キーワードは「連続している」「流産・早産」「先天性の目の異常」「和牛」

ビタミンA欠乏?

10年近く前にわたしが経験した和牛農場の事例と同じ状況だったので、すぐに検査した。

11頭の検査結果です。ゾッとしました。

NOビタミンA(IU/dl)NOビタミンA(IU/dl)
23449253154
23995254113
2453625697
246139259148
248101261201
25143
検査結果

234、245、251が今回の異常を起こした牛です…

ビタミンA不足の症状

ビタミンAが不足すると、本牛だけでなく、産子にも影響を与えてしまいます。

40IU/dlより低くなると、ビタミンA欠乏による症状が認められると報告されています。

症状

  • 眼の症状
    • 夜盲症、瞳孔散大、眼球突出など
  • 泌尿器症状
    • 尿石症や尿路感染などのリスク増加
  • 繁殖障害
    • 妊娠末期の流産・死産、虚弱子、先天性奇形(盲目、水頭症、脳形成不全)など
  • 骨の発育不全
  • その他
    • 浮腫や被毛粗剛など

ビタミンA不足の原因

ビタミンAの血液中の基準値は50〜300 IU/dL、25〜60μg/dlなど様々のようですが、

90IU/dL以上が望ましいのではとわたしは考えています。

教科書に記載されているビタミンAの不足の原因として

  • 飼料給与中のビタミンA不足
  • サイレージの粗悪な保存による分解、品質の劣化
  • 人為的な欠乏飼料の給与(肥育)
  • 消化管内寄生虫
  • 硝酸塩含量の多い飼料の摂取
  • 要求量の増加(高泌乳期、妊娠末期)

などが主に挙げられています。

その他、ルーメンアシドーシスの場合、一胃内でのビタミンAの分解が促進する

遊離脂肪酸濃度や血中BHB濃度と負の相関がある(肝機能の低下による影響?)

と報告があります。

また、ビタミンAは肝臓で貯蔵されているため

血中のビタミンAの低下が反映されるには少しタイムラグがあります。

原因の解明

まずは農場の搾乳牛と乾乳牛の給与メニューを確認しました。

搾乳牛

  • イタリアンサイレージ(現物8kg)
    • 6月〜12月
  • イネWCS(現物8kg)
    • 1月〜5月
  • ルーサン(4kg)
  • スーダン(3kg)
  • ビートパルプ(3kg)
  • 配合飼料(11kg)
    • ビタミンA含有
  • トウモロコシ(0.5kg)
    • 高泌乳牛

乾乳牛

  • イネWCS(現物6kg)
  • スーダン(4kg)
  • ビートパルプ(0.5kg)
  • 乾乳配合(2〜3.5kg)
    • 乾乳配合には1kg当たり75,000単位のビタミンA含有

給与メニューからはビタミンAの摂取量の不足は考えづらい。

しかし胎齢を横軸にとり、ビタミンA濃度を比較すると

胎齢とビタミン濃度の変化

胎齢が「マイナス」とは、分娩後日数を示しています。(−50は分娩後50日です。)

この農場では、乾乳期間を約60日に設定しています。

ステージごとのビタミンAの結果を見ると

泌乳後期」〜「乾乳期」に原因があると考えられる。(右肩下がり)

乾乳配合の保存状態に問題は見られず、採食量に関しても異常は無かったとのこと。

唯一問題があるとすると、死産した牛は2頭とも乾乳期に乳房炎に罹患していた

結果としてBHBの増加を認め、ケトーシスの治療もされていた…

乾乳期の肝機能の低下が根本的な原因なのでしょうか。

もしくは、乾乳期だけビタミンAが壊されたり、吸着するような添加剤が給与されていたのだろうか…

今後の対策

血液中のビタミンAが不足して、胎子に影響を与える時期は「胎齢200日前後」と言われています。ちょうどこの時期になると、骨格形成が本格化し、ビタミンAの「不足」も「過剰」も産子に影響を与える報告されています。

わたしが以前経験した際も、すぐにビタミンAを母牛に給与したことで、「流産や早産」はすぐに防止することはできました。しかし、給与のタイミングが胎齢200日前後だった牛でくっきりと、出生した子牛が「正常産子」と「盲目産子」に分かれました。

今回の対策として、

  • 定期的なモニタリング(1検体当たり1,500円)
  • サイレージの品質検査(Vスコアなど)
  • 経口ビタミン剤の間欠投与
  • 産褥期疾病予防(引き続き)

「和牛」という共通点は何か関係があるのでしょうか?ビタミンA要求量が多くなるなど…

参考図書

「牛の臨床」「牛の血液検査学」「NRC日本標準飼料」「Diseases of Dairy Cattle」

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