こんにちは、突然ですが、皆さんの診療所にはどのような医療機器がありますか?繁殖関係を中心に用いられる超音波機器は多くの診療所で普及しているかと思います。一般診療を業務としている場合では、X線機器や血液検査機器も備えているでしょうか。
いずれにしても、今まで人や小動物でしか利用されていなかった機器も、携帯化・小型化によって産業動物の現場においても広く利用されてきました。
しかし一方で、コスト面にはまだ多くの課題が残されています。1台数百万〜数千万の高価な機器であれば、「欲しいので購入して下さい」と伺いを立てても、なかなか購入してはもらえないと思います。特に利用頻度の少ない内視鏡や腹腔鏡などの機器は、教育機関における利用にとどまっているかと思います。
今回は内視鏡や腹腔鏡の代替として、一般販売されている「ポータブルスコープ」が利用できるか検討してみました。
小型スコープ(DEPSTECHファイバースコープ3.9mm)
今回紹介する機器は、Amazonや楽天市場などで一般的に購入可能なファイバースコープです。もともと狭い隙間を見ることや、配管の中を調べることを用途としたスコープです。
専用のスマホアプリと連動して、ワイヤレスで映像を画面に送信・保存ができます。直径3.9mmなので診療で使用している套管針の外套から挿入することができます。さらに割とコシが強く、自在に形状を作成・固定することができます。


内視鏡として使用してみる
径が細いため、鼻腔からも挿入することは可能です。しかし、耳や鼻に使用しないようにと同封の注意書きにあるように、コシが強いためと、先端が内視鏡の様には操作できないため、代替とはなりませんでした。
次に塩ビパイプを噛ませて、口腔内から挿入を試みましたが、唾液や胃液などの分泌物を除去することができず、視野の確保はできませんでした。結果として、内視鏡としては応用できない様です。
腹腔鏡として使用してみる
今回は「第四胃左方変位」の症例に対して使用してみました。もともと、左側で第四胃に直接触れることができず、ガス抜きに苦労していた同僚のアイデアに、論文の方法を加えて試みたのがきっかけです。手順としては次の通りです。
- 硬膜外麻酔(胸腰椎間、第1・2腰椎間)もしくは局所浸潤麻酔実施
- 挿入部の剃毛および消毒
- 套管針を挿入、内套抜去
- 腹腔内への外気流入(気腹)
- スコープ挿入・撮影
- 器具抜去・縫合(1糸)
スコープ付属の光源も十分で、視野も曇ることなく腹腔鏡と遜色なく写し出せていると思います。套管針を挿入する際の注意点ですが、背・尾側へゆっくりと挿入することで、第一胃への穿刺を避けることができます。こちらの映像では、第一胃の容積が少なかったため、最後肋骨湾曲部のやや上部後方へ挿入しました。
腹腔鏡手術では、トロッカーの挿入前に気腹をすることで、腹腔内のスペースを広げて視野を確保する必要があります(牛の場合は第一胃が視界を遮ります)。今回の症例では、套管針挿入後、外気の流入により1分ほどで十分に視界を確保することができました。
器具の消毒・滅菌は、水洗い・乾燥後、採卵の器具などと一緒にガス滅菌で行なっています。(ガス滅菌器がない場合はアルコール消毒で妥協するか…)
成牛の腹膜炎の診断や、第四胃変位などの手術の一助になりそうです。しかし、子牛への応用においては、十分な気腹による視野の確保が大きな課題となりそうです。
今後は、当初の目的でもある「第四胃変位整復手術」に関して、1STEP法や2STEP法を参考にコストを抑え、誰でも、簡単に、侵襲性の低い術式を完成させたいと思います。
参考資料
- 牛の腹腔鏡下第四胃左方変位整復術の術式に関する研究III:腹腔鏡補助下大網固定術の検討(2008:北海道獣医師会雑誌 田口ら)
- One-step laparoscopic abomasopexy for correction of left-sided displacement of the abomasum in dairy cows (J Am Vet Med Assoc:Kenneth D Newman et al)
- Comparison of 2-step laparoscopy-guided abomasopexy versus omentopexy via right flank laparotomy for the treatment of dairy cows with left displacement of the abomasum in on-farm settings (2008:J Am Vet Med Assoc Jean – Phillippe Roy)


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